United States Patent and Trademark Office v. Booking. Com B.V.判決を踏まえた「一般名称.com」マークの保護可能性及び登録可能性を高めるための戦略 – Strategies for Cultivating Protectable Rights in, and Registering, Generic.com Marks After United States Patent and Trademark Office v. Booking. Com B.V.

2020年7月22日

Written by Victoria J. B. Doyle and Theodore H. Davis Jr.  (和訳:穐場 仁)

2020年6月30日、米国連邦最高裁判所は、一般名称と.comのような一般的なトップレベルドメインからなる「一般名称.com」(裁判所の用語では「generic.com」)の商標について、 特許商標庁(「PTO」)での登録可能性を認めた。1 その際、最高裁は、いくつかの巡回区控訴裁判所により適用されていた、「一般名称.com」が必然的に一般的なものであり、商標権者によって事実上の証拠が提示されたとしても、商標登録に適格でない、との厳格な基準の適用を否定した。しかし、最高裁は、全ての「一般名称.com」が必ずしも保護され登録されるべきであるとは認めなかった。したがって、「一般名称.com」を商標として保護することを望む者は、商標弁護士と協力し、理想的には有利な調査結果(survey evidence)を含む商標の保護可能性の裏付けとなる適切な証拠を組み立てるべきである。この記事は、要求される証拠を組み立てるための提案を含むものである。

訴訟

裁判で問題となったBOOKING.COMという名称は、2006年に使用が開始され、2012年に4件の商標出願が行われた際には既に商業上広く使用されていた。PTOは、その商標が一般的であること、又は、単に記述的で識別性が無く、「二次的意味」をも有していない、ことを理由として出願を拒絶した。連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)の先例に従い2、商標審判部(TTAB)は出願された商標が一般名称であり、それゆえ商標登録として適格ではないとし、審査官の拒絶を支持した。

Booking.comは、バージニア州東部地区の連邦地方裁判所に上訴した。3 その際、特に「Teflonスタイル」の調査結果が提供され、回答者の74.8%がBOOKING.COMをブランド名として回答したと示した。これらの結果に基づいて、地方裁判所は、「Booking.com」は「booking」と異なり一般名称ではないと結論づけた。地方裁判所は、消費者がBOOKING.COMを特定の属を示しているのではなく、むしろそのドメイン名の下で可能となっている「booking」に関連したサービスを示していると理解している」ことは疑いの余地がないものとした。4地方裁判所は、「Booking.com」が記述的であると判断するとともに、この商標がホテル予約サービスを意味する二次的意味をも持っていることは明らかだと認定した。5

第4巡回区控訴裁判所は、地方裁判所がBooking.comの調査結果を採用したことを支持し、CAFCによる同問題の取扱いだけでなく、第9巡回区控訴裁判所の同じ問題の取扱いに対しても分裂を生み出した。6 この分裂により、最高裁が「一般的な用語が一般的なトップレベルドメイン「.com」を伴うだけで保護可能な商標となりえるか」とする問題を審理することとなった。

最高裁はこの問題に対し肯定的に答え、その見解はPTOがどのようにマークを特徴付けるかによってではなく、消費者がどのようにマークを認識するのかに焦点を当てた。すなわち、『「Booking.com」は消費者にとって一般的な名前ではないため、一般名称ではない』」のである。7 最高裁は、「一般名称.com」は、消費者がどのようにその用語を理解するかにかかわらず、「法律問題として商標保護に適さない」というPTOの主張を退けた。「この問題を解決するのには、消費者の認識が用語の意味の境界を定めるという明確な原則を考慮すれば十分である」8。

最高裁は、Booking.comのマークの「.comマーク」部分が「Co.」、「Inc.」または企業を示すサフィックスと同等であるとするPTOの議論を拒絶し、特定のインターネットドメイン名を同時に所有できるのは1つの企業のみであると論じ、ドメインネームのシステムに精通した消費者は、BOOKING.COMを1つの特定された存在と推定すると認定した。この点に関して、「一般名称.com」用語の「独占権」は、「一般名称, Inc.」のような用語とは区別される。最高裁は、「PTOの過去の実務は、そのような包括的なルールを反映していないように思われる」と判示した。参照e.g., Trademark Reg. No. 3,601,346 (‘ART.COM’ on principal register for, inter alia, ‘[o]nline retail store services’ offering ‘art prints, original art, [and] art reproductions’); Trademark Reg. No. 2,580,467 (‘DATING.COM’ on supplemental register for ‘dating services’).” 10 最高裁は、「PTOが認めているこのルールに矛盾する既存の登録」が、「PTOの現在の見解に基づくものであったのであれば、登録取消の危険性がある」と意見を述べた。11

最高裁は、同様に「Booking.com」のような言葉に対する商標保護は競合他社を妨害することになる、というPTOの懸念にも納得しなかった。PTOは、「Booking.com」の商標保護が競合他社の「booking」という用語や、「ebooking.com」または「hotel-booking.com」のようなドメイン名の使用を妨げるかもしれないことを懸念した。最高裁はこの懸念を却下し、「いかなる記述的なマークにも同じ懸念が付きまとうものである」とした。そしてこの懸念に関し、商標法は、商標保護を完全に否定するものではなく、そのようなマークの保護範囲を規定しているものである、とした。特に、消費者を混乱させる可能性がない限り、競合他社の使用がマークを侵害することはない。12 この点に関し、最高裁は弱い記述的なマークの保護範囲は狭く、「古典的フェアユース(classic fair use)」の法理は記述的な用語を「公正かつ誠実」に使用する人を保護する。したがって、この法理はPTOが心配する非競争的効果に反し競合他社を保護し、「Booking.com」の商標登録は所有者に「Booking」という用語の独占をもたらさないことを保証する」、と結論づけた。13

「一般名称.com」の識別性確立

最高裁の見解は、ビジネスで「一般名称.com」を使用する者にとっての思いがけない利益ではなく、そのような者に商標権の取得を成功させる道筋を示したにすぎない。最高裁が警告したように、『「一般名称.com」という用語が、それ自体一般名称であるとするPTOの提案したルールを拒絶する一方で、かかる用語を自動的に一般名称ではないとするルールを包含するものでもない。ある「一般名称.com」の用語が一般名称かどうかは、実際に消費者がその用語をある種類の名前として認識しているか、あるいはその種類に属する他のものと区別可能な用語として認識しているかに依存する』と述べた。14最高裁は、「そのような問いに答えを与えるもの」には「消費者調査だけでなく、辞書、消費者や競合他社の使用法、消費者が用語の意味をどのように認識しているかに関係する他の証拠も含めることができる」と判示した。15 従って、商標権を求める「一般名称.com」ドメインネームの所有者は、登録を求めるマークの出所識別機能を示す証拠を準備し、一般名称や非保護性の認定を回避するべきである。

地方裁判所及び第4巡回区控訴裁判所以前でのBooking.comの成功を考慮すると、準備する証拠は、理想的には一般的に受け入れられている2つの形式のいずれかを使用した消費者調査の肯定的な結果を含むべきである。調査形式の1つめは、いわゆる「Teflon形式」と呼ばれているものであり、E.I. du Pont de Nemours & Co. v. Yoshida Int’l, Inc. ,16から生じたもので、Booking.comの調査専門家によっても採用されたものである。 オリジナルの「Teflon 調査」では、以下の方法論が用いられていた

今から私が8つの名前を読むので、それがブランド名であるか普通名称であるかをあなたに教えてほしい。ブランド名は、ある会社により作られたChevrolet(シボレー)のような言葉を意味する。普通名称は、多くの異なる会社が製造している自動車のような言葉を意味する。もし「Chevroletはブランド名か、それとも普通名称か?」と訊ねたら、 あなたは何と答えるか?

では、「洗濯機はブランド名か、それとも普通名称か?」と訊ねたら、あなたは何と答えるか?

[回答者が質問を理解している場合は継続。理解していない場合は、再度説明]

では、____はブランド名か、それとも普通名称か? 17

2番目の主要な形式の一般名称調査はKing-Seeley Thermos Co. v. Aladdin Indus18における真空ボトル用のTHERMOSマークの有効性に関する訴訟から生じる。  この訴訟における「Thermos形式」調査の顕著な部分は、以下のように要約されている:

スープ、コーヒー、紅茶、レモネードなどの液体を一定期間熱い状態または冷たい状態で保存するために使用される容器の種類を知っているか?

もし明日、あなたがこの容器の1つ、つまり、食べ物や飲み物を熱い状態や冷たい状態で保つタイプの容器を買うとしたら、どんなタイプの店を選んで購入するか?

あなたは何と訊ねるか、つまり、店員にあなたの欲しいものをなんと伝えるか? 19

どちらのフォーマットが選択されたとしても、調査回答者の間で50%以上の純正数回答率は、主張したマークが一般名称でないことを確立するのに一般的に十分である。しかしながら、TeflonまたはThermos形式のいずれの調査も異なる事実関係の事案にそのまま採用されてきたわけではなく、むしろ、両方のフォーマットは、争いとなっている特定のマーク(または主張されているマーク)、ならびにそれらのマークに関連する商品およびサービスが販売される状況を考慮して頻繁に修正されてきた。社外の商標弁護士は、与えられた事例においてどちらのフォーマットが最も効果的であるかを決定するのに役立ち、また、調査エキスパートと協力してそれぞれの形式を事案、事実関係や状況に合わせて調整することも可能である。

社外の商標弁護士は、「一般名称.com」ドメインネームの所有者に、識別性のあるマークに対する商標権の主張をサポートするのに必要な二次的意味を、どのようにして培うのがベストであるかについてアドバイスすることもできる。 この問題については、マークは一般名称であるとするPTOの認定を否定し地方裁判所を納得させたBooking.comの勝利は、そのようなマークが自動的に登録されるものでは無いことを示した点で非常に重要である。その代わりに、マークが記述的なものであったとする地方裁判所の決定は、Booking.comにマークの二次的意味を示すことを義務付けたものである。この意味で、その成功は部分的なものである。

二次的意味の確立するための効果的な戦略には、以下のような形の直接的な証拠や陳述書の提出が含まれる:

  •  調査証拠;20
  • 直接的な消費者の証言;および、
  • (一部の管轄区域では)原告のマークと他当事者のマークとの間での実際の混同

同様に、二次的意味の状況証拠および証言も証拠となる:

  • 「一般名称.com」を商標として使用している実績。すなわち、一般名詞を形容詞的に修飾しており、単にウェブサイトの電子アドレスとしてではない使用。
  • 原告によるTMやSMといった商標権主張の明示。
  • 主張しているマークの下での販売数量。
  • 主張しているマークの独占的使用の期間及び程度。
  • 原告の広告費。
  • マークに基づいて販売された商品又はサービスの(こちらから求めたものでない)マスコミ報道、及び、
  • (一部の管轄区域では)下位ユーザによる意図的なコピー。

このように、二次的意味を示す証拠の組み立ては複雑なプロジェクトとなり得る。特に高度な記述的なマークについては複雑さが増す。

結論

最高裁が労力をかけて指摘したように、Booking.comの判決は、所有者が商標を主張するすべての「一般名称.com」に対して、保護性と登録可能性の認定を命じるものではなく、むしろ、そのような可能性の扉を開くだけのものである。したがって、潜在的な「一般名称.com」マークをもつ所有者は、社外の商標弁護士と協力して主張に必要な根拠を構築した後、マークの保護されるべき地位の主張を進めることが賢明である。

Click here for English version.

脚注

1参照Booking.com B.V. v. United States Patent & Trademark Office, No. 19-46, 2020 WL 3518365 (U.S. June 30, 2020). GINSBURG, J., delivered the opinion of the Court, in which ROBERTS, C. J., and THOMAS, ALITO, SOTOMAYOR, KAGAN, GORSUCH, and KAVANAUGH, JJ., joined. SOTOMAYOR, J., filed a concurring opinion. BREYER, J., filed a dissenting opinion.

2参照 e.g., In re Hotels.com, L.P., 573 F.3d 1300 (Fed. Cir. 2009).

3参照 Booking.com B.V. v. Matal, 278 F. Supp. 3d 891, 896 (E.D. Va. 2017), amended, No. 116CV425LMBIDD, 2017 WL 4853755 (E.D. Va. Oct. 26, 2017), aff’d sub nom. Booking.com B.V. v. United States Patent & Trademark Office, 915 F.3d 171 (4th Cir. 2019), as amended (Feb. 27, 2019), aff’d, No. 19-46, 2020 WL 3518365 (U.S. June 30, 2020).

4 Id. at 918.

5 Id. at 923. それにもかかわらず、裁判所はBooking.comは、「交通機関の予約を提供する旅行代理店サービス、旅行及びツアーチケット予約サービス、主に旅行者に交通機関の予約を提供する旅行代理店サービス、旅行情報の提供、交通予約に関連したコンサルタントの提供及び旅行及びツアーチケット予約、対面及びインターネットを介して提供される前述のサービスのすべてにおいて、識別力を得ていないとみなした。Id. at 922-23.

6参照 Advertise.com, Inc. v. AOL Advertising, Inc., 613 F.3d 974 (9th Cir. 2010).

7 2020 WL 3518365, at *5.

8 Id. at *4 n.3.

9この問題については、PTOは一般的な用語を加えた一般的な企業名称は商標権の適格性を付与しないとするGoodyear’s India Rubber Glove Mfg. Co. v. Goodyear Rubber Co., 128 U.S. 598 (1888)を適用したコモンロー原理に従った。ランハム法(the Lanham Act)に先立つ判決であるGoodyearでは、裁判所は「Goodyear Rubber Company」を「独占権に適さない」とした。(マークの「Goodyear Rubber」部分は、マークは当時「Goodyearの発明として知られたプロセスにより生産された商品の類としてよく知られていた」ため商標として機能できなかった。)

10 2020 WL 3518365, at *5.

11 Id

12 Id. at *7.

13 Id. at *8.

14 2020 WL 3518365, at *7 (強調を追加)

15 Id. at *7 n.6.

16 393 F. Supp. 502 (E.D.N.Y. 1975).

17 2 J. Thomas McCarthy, McCarthy on Trademarks and Unfair Competition § 12:16 (5th ed.).

18 321 F.2d 577 (2d Cir. 1963).

19 2 McCarthy, supra note 17, § 12:15.

20 一部の裁判所は一般名称調査からの肯定的な結果を二次的意味とみなしており、事実、地方裁判所はBooking.comのTeflon調査を証拠として採用した。参照 278 F. Supp. 3d at 920. ただし、原告は二次的意味を調査するためには特別に設計された調査を行うのがより一般的である。

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